2021年6月10日所有者不明の土地について相続時の登記が義務化

◆これまで相続した土地の登記は義務付けられていなかったって本当?


4月21日、通称「所有者不明土地法」の関連法が参議院本会議で可決・成立しました。これで、今後所有者がわからない土地および建物について所有権を明確にし、土地と建物の有効活用を促進するための基礎が整いました。この法律の主旨は、相続人が土地や建物の相続を知った日から3年以内(実際に相続が発生した日ではないことに注意)に不動産登記することを義務付けるものです。
この関連法成立に遡ること3年、2018年6月に所有者不明土地を公共のために利用可能にする目的で「所有者不明土地法」が成立し、翌2019年6月に施行されています。ただし、この法律は所有者が不明の土地とはどういうもので、どのようにそれを再活用するかということを主眼としたもので、実際に制度主旨に沿って所有者を特定するための登記を義務付けるには、今回の関連法の可決・成立が必要だったのです。
なぜこのような段階を踏む必要があったのかというと、所有権というのは民法上極めて強い権利であり、排他的に主張することができるものであるため、その所有権が不明だから、もしくは公共目的だからといって所有権を制限するような行為は法律の制定をもってしても極めてハードルが高かったためです。
今回の関連法成立で、2024年以降相続した土地および建物などの不動産登記が義務付けられることになりました。

また、相続登記の手続きも簡素化され、相続物件の管理が難しい場合は相続した土地を手放して国庫に納められる制度も設けられました。
また、名義人が複数存在する土地や建物の管理制度も新設され、土地を共有する一部の人が誰か分からなくても、裁判所の決定を得るなど一定の条件下で用途変更や売却が可能となりました。さらに、これまで相続登記には相続人全員の戸籍などを集めて以前の所有者から変更登記をする必要がありましたが、今回の制度変更に合わせて不動産登記法を改正し、相続人が複数
存在していても、そのうち1人が申し出れば簡易に手続きできる制度も設けられます。
これらの制度変更によって、新たな所有者不明土地の発生を抑止し、権利関係が判然としない土地の減少が期待されます。まさに所有者が(共有であっても)誰だかわからないという状況には絶対にしないぞという国の強い意志が感じられる制度変更です。


◆所有者が不明な土地があると面大地の開発や再活用の障害になる!!


この法律の制定の目的は、これまで所有者が不明であった土地の取引機会を増やし、休眠状態にあった不動産の流動性を高めること、この一点に尽きます。国土交通省によれば、実際に相続時に遺族が不動産登記手続きを怠り、登記簿上誰が持っているかを確認できない所有者不明の土地の面積は日本全体の約20%に達するとのことですから、国土の1/5の所有者がわからな
いのは異常事態としか言いようがありません。
今回の一連の制度変更では、土地の相続時の名義人変更を義務化したため、この義務を守らない場合には10万円以下の過料(行政処分で刑事罰ではありません)を科されるという罰則規定も設けられており、国および自治体が土地や建物の所有者を把握できない状況は減少するものと考えられます。
では何故、所有者不明の土地を減らす、なくす方向に舵を切ったのでしょうか。それは上記の通り、所有者不明の土地が国土の約20%に達し、土地取引の確実性を担保する上で看過できない状況に至ったからです。所有者が不明であっても、これまでは近隣の住民に確認したり、登記簿をもとに血縁、知人を辿ったりすれば元の所有者から現在の所有者(であることを知らな
い人も多いそうです)を探すこともできましたが、何代にもわたって所有者が不明のまま放置されることも増え、全く手掛かりがなく当該土地の開発が頓挫してしまうというケースが増加しています。限られた土地の有効活用、利用価値の向上という社会上必要な開発行為がストップしてしまうことに早急に対応する必要があったということです。
所有者が分からない土地がこのまま増加すると、地方自治体や企業が所有者を特定するコストがかさみ、適正な管理が実施されず景観を損ねたり、草木の繁茂や害虫・害鳥の発生によって生活環境を悪化させたり、さらにはインフラの整備、防災上の重大な支障が増えたりと、地域社会の安定的な運営に大きな障害となることが明らかだったため、ようやく相続時登記の義務
化に踏み切ったということです。

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