2021年5月30日放置された家が空き家問題としてクローズアップされています。 その原因と問題点、また私たちにどんな影響があるのでしょうか?
社会課題と市民活動内容
空き家は、平成30年総務省の調査※1によれば全国で約846万戸もあり、平成25年の調査と比べて26万戸も増加しており過去最高を記録しました。また、「空き家」と聞くと、過疎化した地方を思い浮かべる方も多いと思いますが、東京でも空き家率が約10.6%、大阪にいたっては約15.2%と大都市圏の家屋の件数から考えれば、膨大な件数になります。
放置された空き家が問題を引き起こす
空き家と一口に言ってもいろいろあり、総務省では「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、別荘やセカンドハウスとしての「二次的住宅」、そして、売却や賃貸、二次利用の予定もなく、管理もされていない「その他の住宅」の4種類に分類しています。
空き家で一番問題なのは「その他の住宅」で、その多くは人の出入りがほとんどなく、管理もされずに放置された状態になっています。また、その件数も平成30年の時点で347万戸もあり、平成25年の調査の時点から29万戸も増えています。
管理・手入れされていない空き家には、どのような問題があるのでしょうか?手入れされていないと傷みも早く、老朽化による倒壊などの危険があります。また、不審者の侵入・占拠や放火など防犯上の不安、ごみの不法投棄や雑草、害虫の発生など景観や衛生上の問題、災害時の倒壊による直接の人的被害や避難路の妨げなどの防災上の問題があります。
なぜ、放置される空き家が増えているのでしょうか?
放置される空き家が増える原因には次のようなケースが考えられます。
所有者が高齢化し、施設や子どもの家に移ったり入院することで空き家になるケースや、親の家を相続したものの、財産分割や税金の問題等で手続きが取られず放置されているケースです。家屋を取り壊すと、固定資産税が上がる場合があるので、放置している方も多いようです。また、親以外にも兄弟や親せきから相続した家屋が最初から老朽化しており、売却や賃貸、住むことさえできないケースもあります。その他、建築基準法の改正等により、増築や再建築ができなくなることで、空き家となることも考えられます。
空き家を放置しているとどのようなリスクがあるのでしょうか?
空き家によって引き起こされる問題の多くは、近くに住む地域の住民に大きな影響を及ぼします。もちろん、空き家の所有者も、空き家が犯罪に利用されたり、倒壊などによるけが人が出ることで、管理責任を問われ、損害賠償などを請求されることになりかねません。
さらに、平成26年に制定された空き家対策特別措置法により、放置された空き家に対する指導が強化されました。対象の空き家(特定空き家)に指定されると、固定資産税の優遇措置を受けられないばかりか、行政代執行により空き家を強制的に取り壊されることもあります。
市民活動による空き家対策が始まっています。
地方自治体や市民活動による空き家対策が始まっています。例えば、生野区の地元企業が取り組むまちづくり活動がきっかけとなって生まれた、空き家について様々な立場の人が意見を出し合う“空き家カフェプロジェクト”※2や、地域の住民が共同で空き家を買い取って、集会場やカフェ、アパートとして貸し出したり、空き店舗のオーナーと学生ボランティアが協力してコミュニティーカフェなどに活用するなどの取組が行われています。
このように、空き家問題は地域の問題であると捉える積極的な地域住民の活動によって、その空き家の問題解決へとつながり、周辺環境への影響を少なくしている事例もたくさんあります。また、空き家を相続する予定や、空き家になる恐れがある不動産をお持ちの場合も放置せずに、相談窓口を設置している地方自治体や定期的に空き家の相談にのってくれる団体もあるので、積極的に利用してみてください。それが、空き家問題の改善にも繋がります。
※1出典:総務省統計局平成30年住宅・土地統計調査
※2 出典:大阪市市民活動総合ポータルサイト
(生野区持続可能なまちづくり事業の一環で派生した「空き家カフェプロジェクト」)